全国の神社を統括する「神社本庁」とは

最終更新日 2024年4月23日 by einvestig

「神社の歴史や仕組みについて知りたい」
「神社本庁ってどんな活動をしているの?」
「宗教に興味がある」

「無宗教」と言われることが多い日本人ですが、初詣や祝い事などの節目には神社にお参りする人が大勢います。
神社は仏教やキリスト教と異なる日本固有の宗教で、全国におよそ8万社以上も存在すると言われていますが、その神社を統括する「神社本庁」をご存知でしょうか。

神社本庁と神社の歴史

神社本庁とは

神社本庁とは「伊勢神宮」を本宗とする宗教法人で、全国の神社を包括する組織として昭和21年に設立されました。
それ以前までは日本にあった各宗教は、行政整理により文部省教学局宗教課に属していましたが、終戦を経て日本を占領した連合国軍最高司令官総司令部(GHQ)は、内政に関する改革を進めると同時に各宗教関係についても見直しを行いました。
それにより大日本帝国の宗教的支柱的存在で日本国の宗教であった「神道」は、GHQの「神道指令」よって無力化され神祇院の解体が行われることとなり、それまで国の一部であった神社は国家から分離することになります。
本庁はこの分離された神社を統括するために設立された組織で、皇典講究所・大日本神祇会・神宮奉斎会の3つの民間団体が中心となってそれまでの事務を継承することとなり、地方組織として各都道府県に神社庁も設立しています。

神社本庁の主な活動

そんな本庁の主な活動には「敬神生活の綱領」の精神の下で、「神社神道の宣布」「祭祀の執行」「氏子崇敬者の教化育成」「神宮の奉賛と神宮大麻の頒布」「神職の養成」「図書の発行頒布」などがあります。
具体的には各都道府県にある神社の人事財政などに関わる事務作業や神社・神職の指導、地域活動の振興を図る活動などで、主に神社における広報活動がメインとなっています。
また、現在の日本を取り巻く少子高齢化や地方の過疎化といった社会問題に対する神社振興のための施策を、およそ40年間に亘って継続して実施しているのです。
2016年には「過疎地域神社活性化推進委員会」を発足し過疎地域における神社の活性化を目指すとともに、過疎対策のための委員会も新たに設置し、過疎指定地域にある神社に対して支援活動を行っています。
公式サイトでは各都道府県ごとの神社一覧を始めとして、それぞれの神社における祭礼行事や催し物・イベントの紹介、神社や地域に伝わる神楽などの伝統文化の継承など、これらの取り組みに関する情報を公開しています。

著名神社の本庁からの離脱が相次いでいる

しかし、これらのことから全国の神社は本庁に属していないといけないか、というとそうではありません。
なぜ?と思う方もすくなくありませんが、別に神社だからといって本庁に必ず加盟しなければならないという法的義務などは一切ありません。
それどころか、最近では著名神社の本庁からの離脱が相次いでいるのです。
離脱する理由はさまざまですが、敢えて共通する事柄を挙げるとすると「求心力の低下」と言えるのではないでしょうか。
本庁は神社振興のためのあらゆる施策を実施していますが、現代人の宗教離れは加速の一途にあります。
それに呼応するように神社に対して大きな寄付を行っていた地場の企業や地主なども激減の一途を辿っているほか、特に地方で深刻に進む過疎化も神社の担い手となる地域社会の基盤を崩しつつあります。
これらのことから日本の神社は10年後には半数程度に減ってしまうのでは、と神主たちの間で噂になっているのが現状です。

本庁では変わらずに上納金を収めるように全国の神社に通達している

そんな中、本庁では変わらずに上納金を収めるように全国の神社に通達しています。
このような状況に対する効果的な策も頭打ちの中、お金だけは変わらずに要求する本庁に対して不信感を強めているという構図です。
現在、本庁に属していない有名な神社には、「日光東照宮」「明治神宮」「気多神社」「梨木神社」「富岡八幡宮」があります。
特に富岡八幡宮の離脱に関してメディアを大きく賑わせました。
富岡八幡宮は大相撲の起源とされる「江戸勧進相撲」の発祥の神社と言われており、江戸三大祭である「深川八幡祭り」でも広く知られる神社です。
そんな関東を代表する富岡八幡宮のが本庁から離脱した理由もいくつかありますが、それが決定的となったのが「宮司」の問題と言われています。
一般的に各神社の宮司を決める際、本庁との間で「誰を次の宮司にするか」という話し合いが持たれます。
基本的には神社の推薦する人物が次の宮司となるわけですが、富岡八幡宮が推薦する権宮司は本庁から罷免されてしまいました。
しかし、この権宮司は代々宇佐神宮の宮司を務めてきた家柄のため支持者が多いことから本庁と対立してしまい、2017年に離脱となりました。
また、香川県にある「こんぴらさん」で有名な金刀比羅宮も、約束されていた大嘗祭に慶事などの際に本庁が神社に配る幣帛料が届かなかったことがきっかけで2020年離脱しています。

まとめ

そのような複雑な事情のある神社本庁は伊勢神宮を本宗としているため三重県にあると思われがちですが、実は東京都渋谷区代々木にあることはあまり知られていません。
しかも本庁を離脱している明治神宮の隣にあるというのですから驚きです。
明治神宮に参拝した際には、一度神社本庁にもお参りしてみてはいかがでしょうか。